2008年9月 2日
ひどい炎天下の中。
蝶の振る舞いははるか遠く、乾いた車道にわたしは立っています。
辺りを見渡してみても、陽炎のほかには車一つも人っ子一人も見当たりません。
なにもないね、と呟くと、
右の陽炎が言いました。おまえは取り残されてずいぶん歩いたのか。
左の陽炎が言いました。おまえはずいぶん歩いて取り残されたのか。
どちらも聡くない。と答えると、どちらの陽炎も大きさを増したように見えました。
引き連れて歩きます。
道路脇にはいつのまにやら民家が立ち並び、人の気配がないことにますます寂しさがふくれてまいります。
民家のドアーの小窓はいずれも屋内が見えないくらいに暗く沈んでいましたが、
なかに1つだけ、光の瞬く小窓を見つけました。
わたしは左右の陽炎を両脇に抱えながら、その小窓へ忍び寄ります。
やはりぐんぐんと大きさを増す陽炎のせいで、はたから見た者がいれば、わたしは歪んだ固まりが民家ににじり寄る気持ちの悪いさまだったに違いありません。
小窓に額を貼り付けて中を覗くと、そこには小さな月がありました。
目を見開いてあっと叫びました。
すると、したたった汗粒が小窓を伝って月光を反射。
月よりも小さな粒の中で、真っ青なバスが猛スピードで通り過ぎていきました。

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