2008年6月19日
夕暮れ電車の中で音楽する人。
ようやっと眠れると安心しつつ指先でリズム。ちょんちょんやりながらこのまま眠ったらあの駅を通り過ぎてしまうだろう、かならずや、そうに違いない、かならずや、ねむい、なにか、目覚ましに、鳴るものを、考えなくては考えなくては鳴るものをと無意識にジャケットの真ん中のボタンをちょんちょんとはじいていた。
ヘッドホンの音漏れを気にして耳から外すに、これはむしろはじく音がでかいと気づく。しまったと指を止める。眠気もそがれる。
細目から見えていたシルエットは何。あのリズミカルに流れていたのは何かと思っていたビルや電信柱、街灯、看板が西日を浴びて急に尾を引きはじめてオレンジに滲み、にじんだ、木、子供、喫煙、雲、ボール、赤ワインなどはあちらこちらへ反抗するけれどもやはり尾を引いて、にじんだ、彼らは背面からゆっくりと倒れ込むようにしてしぶきをあげる。
まだ明るくて、もう暑い。
葉っぱが一面に詰まったプール。枯れ葉ではなく新緑のプールの端に一列に並んだ彼らはどぼんどぼんの音も立てずに倒れていく。あかりや煙、電線、ガラス、ちぎれ雲がやぶれかぶれで紛れていって、にぎやかに飛び散る緑と水分。
最後に残ったのはわたしで最後に倒れるのも酷ではないよ。ワインボトルを放り投げた左手で鼻をつまみ、突き上げた右手は勢いよく後方に振り落として。どぼん。
と音がした。
耳をふさいで、目を閉じて、鼻をつまんで、降りる駅で、目が覚めた。

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